狼かける吸血鬼<短>
「ここっち来んな…!」
ベッドに手をついてどんとん近づいてくる。
「痛いの嫌いなんだってば!」
刺されたら痛いに決まってる。
あんな太い牙が身に食い込むんだぞ。
痛くないわけが無い。
私が泣きそうになりながら叫ぶと、奴の動きが止まった。
と言っても、縮こまる私を壁に追いやった状態で。
それはそれで困る。
『最初は痛いかもしんねぇけど、後はイイぜ。…きのうの女も善がってたよ』
「なっ…!」
そして、耳元に唇を近付けて、
『すっげー気持ちいいから』
低く、音を震わせた。
ゾクリと胸が跳ねて。
布団を掴む手には力が入らなくて。
全身が震える。
でも、
「絶対無理……!!!!!!!」
雰囲気なんかに流されないぞ!
強く自分を持つんだ。
ちょっと、顔かっこ良くて声とか仕草とかに色気があったって。
騙されないぞ!
『…ふーん。これで足腰立たなくなる奴が殆どなんだけどな』
てっきり、私がどんなに拒否したって諦めなさそうなのに、奴はあっさり私から離れた。
『吸血鬼は全部が人間を魅了するように出来てんだよ。
容姿、声色、匂い…お前等の五感を擽って、血を吸わせてもいい、って気にさせるんだ。因みに人間を感じさせるのがとびきり上手い』