狼かける吸血鬼<短>


暫く放心状態だった私は、ようやく正気を取り戻して、保健室を後にした。


そして通りかかったトイレの前。

今は既に授業中で、使用していたとしても、我慢出来ずに授業中に手を上げて教室から出いく人がいたとして1人くらいだろう。


なのに、中からは何故か声が聞こえてくる。


『………〜〜』

よく聞こえない。

が、恐らく男女の声。
可笑しい。勿論トイレは男女別になっているのに。

興味本位で、トイレに近づいて聞き耳を立てた。

すると、


『あっ…はぁ』


「!!!!!」


女の人の、甘ったるい声。

それだけでも、心臓が飛び出るくらいに驚いたのに、


『は…はるかく…!あっ…』


はるかくん

確かに聞こえた。
甘い声で呼ばれる奴の名前。


それを聞いた途端、

私の心臓は大きく波打ち、より一層早くなる。

と同時に、

何かがズグッと鈍く刺さったような。
気持ち悪い感覚を覚えて。

ズキズキと胸が痛む。



『や……はぁっ』



これ以上聞いていたら頭がおかしくなりそうで。
私は耳を塞いでその場を駆け出した。




恐らく中にいたのは、


笹木遥と、さっきの巨乳女。


血を、吸っていたんだろう。




私のは吸えないと言ったくせに。
他の子だったら簡単に吸って。




「お前の好物は私じゃないのかよ」





< 20 / 29 >

この作品をシェア

pagetop