狼かける吸血鬼<短>
暫く放心状態だった私は、ようやく正気を取り戻して、保健室を後にした。
そして通りかかったトイレの前。
今は既に授業中で、使用していたとしても、我慢出来ずに授業中に手を上げて教室から出いく人がいたとして1人くらいだろう。
なのに、中からは何故か声が聞こえてくる。
『………〜〜』
よく聞こえない。
が、恐らく男女の声。
可笑しい。勿論トイレは男女別になっているのに。
興味本位で、トイレに近づいて聞き耳を立てた。
すると、
『あっ…はぁ』
「!!!!!」
女の人の、甘ったるい声。
それだけでも、心臓が飛び出るくらいに驚いたのに、
『は…はるかく…!あっ…』
はるかくん
確かに聞こえた。
甘い声で呼ばれる奴の名前。
それを聞いた途端、
私の心臓は大きく波打ち、より一層早くなる。
と同時に、
何かがズグッと鈍く刺さったような。
気持ち悪い感覚を覚えて。
ズキズキと胸が痛む。
『や……はぁっ』
これ以上聞いていたら頭がおかしくなりそうで。
私は耳を塞いでその場を駆け出した。
恐らく中にいたのは、
笹木遥と、さっきの巨乳女。
血を、吸っていたんだろう。
私のは吸えないと言ったくせに。
他の子だったら簡単に吸って。
「お前の好物は私じゃないのかよ」