狼かける吸血鬼<短>
関係ないのに。
ないに決まってるのに。
この痛みの正体は?
私も奴の魅力にまんまて取り付かれてしまったんだろうか。
求めたのは向こうから。
ターゲットにしてきたのも向こうから。
なのに、どうしてこんなに気になってしまうんだ。
笹木遥 という存在が。
「意味分からん…!」
自分も、笹木遥も。
私は宛てもなく歩いて、気付けば、書道室や美術室がある、頻繁には使われない階に来ていた。
人気もないし、丁度いいや。
そう思って、暫く此処にいようかな、と考えた時、
『何でこんなとこいんだよ』
聞き覚えのある、低くて艶のある声。
振り向くと、
「さ、笹木遥…」
学校に来ていない筈の、奴の姿が。
私の悩みの元凶。
「おお前こそ何でこんなとこに…!」
声が震えてしまう。
緊張、してるのか…?
『久々に学校きたらよ、お前の匂いが教室じゃ無い方から匂ってきたから、つけてきた』
平然という笹木遥。
「そ、そんなに匂うのか!?私!」
少し、抵抗がある、匂うという事実。
悪い意味では無いが、なんか嫌だ。
しかしそんな私の考えとは裏腹に、
『匂うも何も……狂わせる勢いで俺を惹き付けるよ』
笹木遥にとっては、極上の言葉だったんだ。