世界が終わる前に
「ひっ……えっと、どうって?」
「つーか……あんたって頭悪いの?出来が良いのは、お勉強だけってわけ?」
「……」
由紀ちゃんは嫌いじゃない。
嫌いじゃないけど、苦手だ。
由紀ちゃんの馬鹿にしたような台詞と、蔑(さげす)んだような瞳は、やっぱり冷たくて、そこには埋めようのない距離を感じた。
「まあ、いいけど。……それで?漆原黒斗とは、結局付き合ったの?」
「えぇッ!?」
「だから、付き合ったの?」
「……ち、違うよ!付き合ってなんかないよ!」
「ふうん?なんだ、てっきりあんたたち付き合ったのかと思ってたわ」
呆れたような表情を浮かべた由紀ちゃんは「あいつ案外、奥手なんだ」と意外そうに呟いた。
「乗って」
「は?」
「いいから早く」
言いながら由紀ちゃんは『乗れ』の合図で急かすように自転車の荷台をトンと叩いた。
私は、片足を地面につけて車体を支えている由紀ちゃんの背中に「はいっ」と勢いよく返事をして荷台に飛び乗った。