世界が終わる前に
未だ尚残っている残暑の蒸し暑さの中、吹き付ける熱風を切るように走り出した真っ赤な自転車。
暑さを帯びた風が、悪戯に由紀ちゃんと私の髪を揺らした。
今日も行き先は不明だけど、不思議と前よりは不安じゃなかった。
流れるように過ぎてゆく景色と通学路の街路樹を横目に、私はお兄ちゃんに言われた言葉を思い出していた。
漆原黒斗と関わるなと言ったお兄ちゃんはきっと、由紀ちゃんたちのような人種とも関わるなと言うだろうか。
その瞬間、胸に芽生えたのは、微かな背徳感。
先入観や固定観念――砕けて言えば外見――だけで、他人を簡単に判断してしまう人間の物悲しい性質が、私は苦手だ。
勿論、私にだってそういうふうに他人を評価してしまう節がないわけではない。
現に、初め由紀ちゃんたちや漆原黒斗たちを私は勝手な先入観と固定観念で、人格を判断してしまっていた。
でも、たとえば、髪の色や形(なり)だけで、一体その人の何がわかると言うのだろうか。