世界が終わる前に


「いってら〜」



傍らから聞こえてきた、そんな間延びした声にハッと我に返ると、既に先をスタスタと歩きはじめてしまっていた、穏やかな声色で『俺も行く』と言ってくれた、優しい彼の大人びた広い背中を慌てて追いかけた。


そして、小走りで近寄って何とか彼の隣まで追いつくと、ふと見上げた先にあった綺麗な彼の横顔にお礼を言った。



「あ、の……ありがとうございます」


「……別に」



こちらに視線も向けず、すぐに返ってきた彼の低く短い返事は、とてもぶっきらぼうなものだったけれど、不思議と怖いとは全く思わなかった。


広い店内の反対側にあるドリンクバーまでの道程を、凸凹な肩を並べてちょっと近い距離感を保って無言のまま一緒に歩いた。



張り詰めていた緊張と不安が無くなった訳じゃないけど、やっぱり不思議と少しばかりそれが軽くなったのは確かで、むしろ安堵したくらい私は何だかとても彼という存在にホッとしてしまった。


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