透明にんげん。




……………見た。



間違いない。
今僕を見たんだ、彼女は。



僕は自分が透明な存在であることを忘れて叫んだ。


あぁ、嬉しいとはこれか!
ありがとう、ありがとう。
僕はここだよ、笑いかけてくれ。

僕を、愛してくれ。



彼女はこちらへ走ってきた。


あぁ、世界とはなんと美しいものか。
愛とはこれなのか。


僕は、彼女を愛してるんだ。









でも、そんな僕の思いとは裏腹に彼女は僕をすり抜けた。



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