ウォルフとワタシ

部屋の中へ、肩で息をするウォルフが入って来て、パタリと扉が閉まった。


「‥ッ、あのクソ女しつこくて‥!」


力なくベッドに腰を下ろした私を見下ろし、ウォルフがらしくもなくそんな言い訳を述べる。



‥そのクソしつこい女と寝ようとしたくせに‥。



無言で睨むと、ウォルフは狼みたいな髪質の銀の髪を荒々しくかきあげる。


「‥クソッ!オマエ、足速ぇんだよッ!」

「‥‥‥。」

「‥ッ、違う、そうじゃねぇ‥。‥‥‥オマエ‥」

「‥‥‥。」


ウォルフの大きな手が私の頬に伸びてきた。

ふわりとウォルフの太陽みたいな匂いが香る。


「‥オマエ、なんで泣いてんだよ‥」


私はキッとウォルフを睨みつける。


「ウォルフみたいな無神経な男には絶対教えたくないッ!」


震える声でそう言い捨て、顔を伏せてまた涙する。

そんな私を見降ろすウォルフから、珍しくも切なげな溜め息が吐き出された。

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