彼岸と此岸の狭間にて
「ふう〜っ、助かった」             
葵は即座に足を崩す。                          
本堂には大きな仏像が安置されており、その回りの多数の蝋燭が神秘的な雰囲気を醸し出していた。               
「香澄はここは何回か来てるの?」                    
「うん。お祖父ちゃんのお葬式の関係で…」                
「俺はまだないんだ。身近な人が死んでないんで…こういう所に来たのは高校の旅行で一昨年京都に行った時以来だよ」                  
香澄はそれに対しては何も答えなかった。                                                                 


「お待たせしました」              
「何かありましたか?」             
「あるにはあったのですが、大して役に立つ物は…」            
和尚は手に古文書のような物を2冊程持っていた。                         
「これはこのお寺に高額なお布施をしてくれた方の名簿のような物ですが、ここに『土門重吉郎』とあります」                      
葵と香澄が覗き込んで確認する。

「いくらですか?」               
「金200両となっています」

「物凄い大金ですね!?」

「現代のお金になおすといくらくらいなの?」                 
「その時代の金の価値によって変わるんだけど2倍から7倍と言われているから、それでも4000万円から1億4000万円の間だよね」                     
「そんなに?」                 
「それで、それはいつ頃か分かりますか?」                 
「享保10年ってなってますね」                     
(また享保10年か!?この年に何かあったのか!?…ん、確か『土門重吉郎』の没年って…)
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