彼岸と此岸の狭間にて
「香澄、俺もう一度墓石の所に行って来る」                
「どうしたのよ〜っ?」                                                                                     
息を切らして墓石の所までやって来る。                              
(…やはり、『享保10年』に亡くなっている。どういう事だ?遺言で贈与したというのか?…死因は何なんだろう?)                                                                                                                  
「どうしたのよ、一体、急に飛び出して行って!?」            
「わりい、わりい。実は…」                       
享保10年が三度も出て来た事を話す。                  
「そうだったの、『不知火神社』にも享保10年にお金を上げていたんだ。そして、享保10年に亡くなっている。不思議よね〜っ!?」                      
「不思議な事と言えばもう一つ!」                     
「何ですか?」                 
「こちらの古書に。これはその時代の住職が付けていた日記みたいなものですが……」

次のような文章が載っていた。

『享保10年、土門重吉郎の使いと称する者が金200両を我が寺に寄贈する也。その者、曰く、土門重吉郎は自己の過ちを悔いて自害した故、その遺体をこの寺にねんごろに埋葬してその魂の安らかな眠りを日々祈られたし、と。その者、希代の長身で、顔立ちは異人の如く、そして風の如く立ち去る也』 

(簡約:享保10年、土門重吉郎の使者がやって来て200両を置いていった。その使者が言うには、土門重吉郎は自殺したからその死体をこの寺で葬って欲しい。その使者は長身で外国人のような顔をしていた)
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