彼岸と此岸の狭間にて
「2月11日。でも、最初は滑り止めだから別にいいのよ…葵は?」                 
「2月7日…」                 
「あたしより早いじゃない!?」

「俺の場合は滑り止めではなくて『絶対行きたくない大学』だから…」                
「だったら受けなければいいじゃない!?」                       
「そこはほら、頭の悪い人なりの悩みというものがあるわけで…」

「またバカ言ってる!」             
「あはははっ…ところでさ…?」

「何?」                    
「……」                    
「何よ!」                   
「いや、別に何でもない」            
「途中で止めるのはマナー違反よ!」              

クリスマスイブの事を聞けなかった。事実は事実として受け入れる自信はあるのだが、立ち直れずに試験に臨む事が恐かった。現状では『浪人』は全く考えていなかったから…                                 
「そろそろ帰ろうか!?」            
「そうね…」                                                                  
冬の日は短い。駅周辺も既に真っ暗であった。                
「さみい〜っ…」                
「葵、これからどうするの?」

「帰って勉強…」                
「そう、私ね、約束があるんだ…だから、ここで……今日はなかなか有意義な1日でした。じゃ、試験頑張ろうね!」                    
『バイバイ』という捨て台詞にも似た言葉を残して混雑する駅の中に消えて行った。                 


一人取り残された葵には言い様もない虚しさだけが残った。
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