彼岸と此岸の狭間にて
試験を全て終え、後は結果待ちの状態で三月を迎えた。           

『絶対行きたくない大学』は無事合格したが、本命の発表はこれからだった。 

香澄は見事K大に合格し、赤沢には彼女が出来た。 


葵にも異変が起きた。例年ならバレンタインは母と美優からの『悲しくも切ない義理チョコ』を貰って終了となったのだが、今年は新たに2個追加された…香澄と美紗ちゃんから…これは葵に勇気を与えた。どんな艱難辛苦(かんなんしんく)も乗り切れる気がした。                      

そして、明日、高校の卒業式を控えながらも、葵は今、目黒にいる。詳しく言うならば葵の家のお墓がある東横線の『祐天寺』駅という所にいる。             

墓地は駅から西に直線にして200メートル行った所の住宅街にあった。と言うよりは、墓地の周りに家が徐々に建っていったという方が正鵠を得ている。                                                                          
葵の住んでいた家は墓地とは反対側だったが、昔はこの辺りはまだ空き地があったのでよく遊びに来ていたから場所はすぐに分かった。                                                                     
(懐かしいなあ。駅前とかすっかり変わっちゃってるし…小学校の友達と今、会っても絶対分からないよな!?)                                   
5分程歩いて来ると、住宅街の中に凹みが見える。そこが紫馬家が檀家となっている『久遠寺』の墓地である。                                              
都会の中にある墓地だけに広くはない。ましてや香澄の家のような大きな墓石もない。ただ小さな墓石が所狭しと犇(ひし)めきあっているだけである。                           
昔の記憶を辿りながら墓石を探す。                    
(どこだったかなあ!?…この辺だったような……あっ、あった!!!)
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