彼岸と此岸の狭間にて
墓石は中規模で、黒の御影(みかげ)石が鈍い光を放っていた。
折角来たのだから墓参りをしようと思い、コンビニで線香、ライター、1.5リットルの水とタオルを買ってきていた。
タオルで墓石の両面を拭き、その上から水を掛ける。それからライターで新聞紙に火を点け、線香にその火を移す。
焼香して暫らく手を合わせてから墓石の隣にある埋葬者が刻まれている小さな石碑を覗く。
(一番最初は……『紫馬聡乃助』で…次は『妻雪乃』、そして『雪太郎』…あれっ!?……後は『巻き物』通りだよな!……『紫馬葵』がいないじゃないか!?)
没年を確認する。
『聡乃助』は正徳五年(1716年)、『雪乃』は享保七年(1722年)没となっている。
(一番最初の『紫馬葵』はどこに消えた!?『巻き物』上では存在したけど、実在していなかったって事は最初から存在していなかったって事!?
『無』をわざわざ『存在』するとしたのか?それに何の意味があるんだ?)
葵は茫然としてその場を暫らくは動けなかった。
「ごめんください」
久遠寺の和尚を訪ねてみる。
久遠寺はこじんまりとしたお寺で細々とやっているという感じがした。
紫色の袈裟を着たお坊さんが応対に出る。
「はい!?」
「あの〜っ、私はこちらの檀家の『紫馬』という者の息子なんですけれども…」
「あ〜っ、紫馬さんの息子さん!?それで今日は、何か?」
折角来たのだから墓参りをしようと思い、コンビニで線香、ライター、1.5リットルの水とタオルを買ってきていた。
タオルで墓石の両面を拭き、その上から水を掛ける。それからライターで新聞紙に火を点け、線香にその火を移す。
焼香して暫らく手を合わせてから墓石の隣にある埋葬者が刻まれている小さな石碑を覗く。
(一番最初は……『紫馬聡乃助』で…次は『妻雪乃』、そして『雪太郎』…あれっ!?……後は『巻き物』通りだよな!……『紫馬葵』がいないじゃないか!?)
没年を確認する。
『聡乃助』は正徳五年(1716年)、『雪乃』は享保七年(1722年)没となっている。
(一番最初の『紫馬葵』はどこに消えた!?『巻き物』上では存在したけど、実在していなかったって事は最初から存在していなかったって事!?
『無』をわざわざ『存在』するとしたのか?それに何の意味があるんだ?)
葵は茫然としてその場を暫らくは動けなかった。
「ごめんください」
久遠寺の和尚を訪ねてみる。
久遠寺はこじんまりとしたお寺で細々とやっているという感じがした。
紫色の袈裟を着たお坊さんが応対に出る。
「はい!?」
「あの〜っ、私はこちらの檀家の『紫馬』という者の息子なんですけれども…」
「あ〜っ、紫馬さんの息子さん!?それで今日は、何か?」