彼岸と此岸の狭間にて
「それは『生と死の狭間に』いる事…」                  
「大雑把に言えばそうだ!だが、医学的科学的レベルの条件である事は間違いない」                      
「それが実現可能なら、将来的には、『植物人間』を復活させる事が出来ますね!?」                     
「そうなるかも…」               
「でも、死んだ人間を生き返らせるわけですから、現状では『倫理規定』違反ではないですか?」                
「将来の医療行為に役立てる為の実験という名目で国の承認を得てある。但し…」                       
紫馬はここで話を止め、ワイシャツの胸ポケットからタバコを一本取り出し、火を点ける。                     
「あれっ、紫馬先生、タバコは止めたんじゃ…」              
「葵の事故で手を出してしまったよ…」                  
紫馬は自虐的に笑いながら煙を天井向けて吐き出す。            
「それ程、精神的ショックが…」

「まだ私は良いほうだよ…妻もそうだが、特に美優がね!?」

「美優ちゃんは葵君大好きでしたからね……」               
「……で、さっきの話の続きだけど、死んだ人間を生き返らせる事になるわけだから世間的影響は大きい。そこでこれは『トップシークレット』扱いになっている。青柳君、そこのところは頼んだよ!」                 
「はい、分かりました。でも、そうなると葵君を無事再生できたとしても…」             
「うん、私達と一緒に暮らす事はできない!!」              
「でも、赤ちゃんから育てれば良いのでは?」               
「それも考えた。だが、それでは全く別人格の葵が誕生してしまう事になる。脳と体は以前の葵と同一だとしても、性格は環境が作るものだからね!?」               
「じゃ、どうするんですか?」
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