彼岸と此岸の狭間にて
6畳の部屋で焼香を済ませる。
先程の人がオレンジジュースと『香典返し』を持って来てくれた。
「これは…?」
「まだたくさんあるから大丈夫!」
静かに笑う。
「生前、父親の相手をしてくれてありがとね」
「いえ、僕はただ…」
「こんな辺鄙(へんぴ)な所だから客も殆ど来なかっただろうし、数年前に母も亡くしてるから随分淋しかったと思うんだ…
何度も『一緒に暮らそう』と言ったんだけどね…」
目に光る物が見える。
「『どうしてもここを離れるわけにはいかない』って…ごめん、湿っぽくなっちゃった…」
「いえ…」
葵も胸が締め付けられる。
「あっ、そうだ!遺品を整理していたらある物を見つけたんだ…ちょっと待ってて…」
その男性は店の方へと出て行った。
「これなんだけど…」
手に古い『巻き物』を持っている。
「何ですか、それは?」
「うん、どうやら家系図らしいんだけど…君、名前は?」
「紫馬と言います」
「やはり、そうか!?」
「えっ?」