彼岸と此岸の狭間にて
「ここじゃなんだからちょっと店の方に来て!」
葵は立ち上がるとひっそりと静まり返った店の中に入る。
「これ見て!」
巻き物の表の所に『紫馬葵君へ』と筆書きされている。
「あっ、本当だ!」
(でも、俺、名前言ったかな?)
その男性がショーケースの上で巻き物を広げる。
「あっ!」
驚くのも無理はない。中には
『1.菱山家家系図
2.土門家家系図
3.長谷部家家系図
4.紫馬家家系図
5.山中家家系図 』
と記されてあった。
「何ですか、これは?」
「いや、僕にもさっぱり…」
更に巻き物を広げていくとその順番通りに詳しく家系の流れが手書きされていた。
葵は自分の家、つまり4番目の『紫馬家』の所に目を遣(や)ってみる。
「あっ!」
再び驚く。一番最初の名前が『紫馬葵』となっている。
「これ、僕の名前と一緒です!!」
その名前の箇所を指差す。
「えっ、本当!?」
妻の名前は『雪之(ゆきの)』となっていた。そして目をずっと下に落としていく。
「あっ!」
三度(みたび)驚く。