彼岸と此岸の狭間にて
「それでは折半と…」
山中は葵に貰ったお金の半分を分け与える。
「えっ?お金を戴けるのですか?」
「当然で御座る。組んで仕事をするというのはそういう意味ですから…」
(何もしていないのに申し訳ないなあ)
絡繰(からく)りを知ってしまえば何事も容易(たやす)いもの。
その後、葵は山中の傍で腕組みをして立って威圧を与える役目を演じた。
「1週間分の『お足(お金)』は稼ぎましたかな!?どうです、蕎麦でも食べますか?」
(そう言えば、ここに来てから何も食べてない!!)
「賛成です」
再び賑わいのある通りに出、最初に目についた『蕎麦屋』に飛び込む。
(薄暗いなあ…)
電気のある生活に親しんでしまった葵にとって室内は全て暗く感じた。
店内は10席と狭かったが半分程埋まっていた。
空いている席に座り、山中と同じ物を注文する。
暫らくして蕎麦が運ばれて来る。見た目は現代の物とは然程違っているとは思えなかった。だが、一口食べて顔をしかめる。
(薄っ!蕎麦自体は美味しいが味が薄い)
化学調味料に馴らされた味覚神経にとっては物足りないのは当然である。
取り敢えず腹拵(ごしら)えをして16文(400円程度か!?)という金額を言われるままに払って外に出る。