彼岸と此岸の狭間にて
〔2〕

「葵、じゃあ、夏期講習で…」                      
三ツ崎と駅で別れる。              
(4時か!?本屋にでも寄るか!?)                                           

「葵じゃない!?」               
振り返ると思いがけない人物が立っていた。                
「あれっ、香澄!どうしたんだよ、こんな所で。久しぶりだなあ…」                 
「ホント、久しぶり…2年前に会って以来よね…」


香澄は1人ではなかった。隣に背の高い『ジャニーズ系』の顔立ちをした大学生風の男が立っていた。                   
「今、本屋さんに行ってきたところなの…」                      
葵の訝(いぶか)しい顔に気付く。                    
「あっ、この人は…」

(この人は〜?)                

「私の…」

(私の〜?)                  

「家庭教師の『本田』さん。T大の三年生…」               
(家庭教師か。びっくりさせるなよ)                   
「初めまして、本田です」            
「初めまして、香澄の幼なじみの紫馬と言います」             
「香澄ちゃんと幼なじみなんだ!?」                   
「はい」




「で、どうしたの?」              
「うん、今、三ツ崎と夏期講習の申し込みをしに行って来たところ。それで本屋にでも寄ろうかと思っていたら…」                    
「え〜っ、三ツ崎君も一緒だったの?会いたかったなあ…」

「それで香澄は?」               
「これからお茶でもしようかと思っていたの。葵もどう、積もる話もあるし…」
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