オパール・オッドアイ
「それはヘタレだから?」

「自分から『俺、ヘタレです☆』って言う奴見たことないんだけど…。
そうじゃなくて、聖歌が好きだから嫌がる事したくないだけ。」

「ふ~ん。
まぁ、精々頑張って。」

「ああ。」


時間は流れて只今浴衣の着付けに奮闘中。
とは言っても自分で着付け出来ないのでるーちゃんにぎゅうぎゅう締め付けてもらっている状態だけど…。

「るっ…るーちゃ…。
くるし…!」

「少しくらい我慢しぃや!
苦しくて当たり前。
タオル腹に巻いて縛って胸はさらしをきつめに巻いてるんやから。
それに…。」

「なに…?」

「なんか…こう、せいちゃんをぎゅうぎゅう縛って苦しそうな顔を見ているともっと締め上げたくなるって言うか…。」

(ひぃ~~~っ!!)
道理でさっきからるーちゃんの目が爛々と輝いているわけだ。
身の危険を感じガタブルしながら、るーちゃんの開けてはいけない扉を不本意ながら開けつつ、なんとか着付けが終わった。

「ふぅ~。
こんなもんやろ。」

「すご~い!帯、綺麗!
ありがとう、るーちゃん!!」

動くたびにふわふわと揺れる帯はまるで金魚の尾鰭のようで可愛い。
しばらく鏡の前で帯を揺らして遊んでいるとるーちゃんが浴衣を持って戻ってきた。

「次、私も着付けするから手伝って。」

「うん!」

とは意気込んでみたものの、たいして手伝えるような事はなく、「その細い紐とって」や「ピンク色のとって」と言われ、アタフタしながら言われた物を手渡すだけ。
しかも私の着付けにかかった時間の三分の一で大和撫子が完成。

「早い上に綺麗。
さすがるーちゃん。」

「慣れとればこのくらいの時間で出来るんよ。
教えたろか?」

「是非!!」

「それじゃ明日にでも。
化粧と髪も出来とるしもうそろそろ出発時間やから下行こか。」

「うん!楽しみ!!」

「浮かれすぎて転んだり迷子になったりせんようにな~?」

「うっ…。
しないもん…、たぶん。」

ケタケタと笑われて少しむくれるも、すぐに笑顔に戻りるーちゃんの腕に引っ付いて一緒に下におりた。

この別荘に居られるのも明後日まで。
出来ることならこの楽しい時間がずっと続けば良いのに。
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