オパール・オッドアイ
「こめんにゃはい。ほんてぃょうにひゃんしぇいしてぃえまひゅ。
みょうひょろひょろかんびぇんしていららけにゃひれひょおか。
にょびてたるんでしみゃいみゃしゅ。」
翻訳
(ごめんなさい。本当に反省しています。
もうそろそろ勘弁していただけないでしょうか。
伸びて弛んでしまいます。)

話している間も上下左右に引っ張られほぼ正確な発音は出来なかったけど意味合いは伝わるだろう。

「御安心下さい。もし貴女のお顔がズルズルに弛んでしまっても私は大好きです。」
「出来れば元の顔のまま好いてほしいです!」

半べそかきながら謝ること30分なんとか許してもらえてるーちゃんにベッタリ貼り付いて祭りを楽しんだ。
頬は痛かったけどこんなに心配されたことが凄く幸せで嬉しかった。
贅沢だし身勝手な話だけど親や兄弟に心配されるより友達などの他人に心配されるほうが正直嬉しい。
家から出なければ知ることのなかった感情に少し戸惑うけれど同時に納得もし、頭のモヤがすっきりする。
私が欲しかったのはたぶんこれだったんだ。

心が満たされる感覚を味わいながら祭りを皆と楽しんでいると大きな音と共に夜空に花火が上がった。

久しぶりに生で、それも間近で見る打ち上げ花火は格別に綺麗で思わず言葉を失い惚けてしまう。

右手でるーちゃんのたもとを掴んだまま見上げていたらいつの間にか左側にいたウサギと肩が触れたのでチラッと視線を移すと思いっきり目があった。
なんとなく気まずくて慌てて視線を花火に戻すと左手の指を絡めとられて周りに見えないように手を繋がれる。

「~!!!」

恥ずかしさと驚きで叫びそうになるのをなんとか押さえて抗議の視線を送るといたずらが成功した子供のような顔をしたウサギが口に人差し指を当てている。
静かにしろと言うつもりなのか。
別にこっちは静かにする必要も責任もないので少し不満に思ったもののいちいち騒ぐのも恥ずかしいので大人しく黙っておく。
そのようすに満足したのか嬉しそうに笑いながらまた花火に視線を移すウサギにならって私も夜空に上がる大輪の花を眺める。

その時ふとデジャヴを感じた。

前にもこうして誰かと手を繋いで花火を見上げたことがある…?
琥珀か雪お兄ちゃんかと思って記憶を掘り返しても覚えがないうえにどうもしっくりこない。
いろいろ考えながらではこの時間がもったいないのでひとまず横に追いやって花火に集中することにした。

「…いつかまた見に来よう。」
「えっ…?」

ウサギが一瞬独り言かと思うほど小さな声でポツリと呟いたのに気づき、周りの音のせいで聴きづらいのかと口元に耳を近づけて聞き返した。

「また一緒に花火見ようって言ったの!」

真っ赤になって黙って頷くのが精一杯だったけどウサギはそれでも喜んでいる。

もう少し、せめてウサギの半分くらい素直になりたいと願う聖歌だった。










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