『霊魔伝』其の弐 火の章
《なかなか良い。では静かに話を聞くように。

この世の中は、物質できているように見えるが、実はそうではない。
今まで零次朗が見たり触ってきたものは、それは触っているようでそうではない。
本当はそれらが持つエネルギーを感じていただけなのだ。
物質というものは、存在するようでその実体はスカスカじゃ。
その物質を作っている要素を、これ以上分けられないところまで、突き詰めていくと核というものに行きつく。
そしてその周りはエネルギーが満ちておる。そのエネルギーを感じることが、触ったと言うことになるのだ。

エネルギーをわかりやすく別の言い方で言えば、『ものを動かす能力』である。またその能力は変換が可能で、例えば電気のエネルギーを熱のエネルギーに変えられるのもその一例じゃ。ここまではわかったかの。》

「何となくわかる。例えば、電気ストーブが暖かいのと同じ事だろ。冷蔵庫で氷ができるのもそうかな。難しいけど、わかるような気がする。」

《それでよい。イメージを大切にしろ。

そのエネルギーは、質量にも変わる。もちろんその逆もある。
原子力というのは、物質の質量をエネルギーに変換することなのだ。
人はそれを科学の力で行うが、我ら霊魔は人と協力することでその能力を簡単に使えるようになる。
何故なら、我ら霊魔はそのエネルギーそのものだから。
だが、通常のエネルギー体としての存在は、非常に不安定なのだ。
だから、零次朗のような霊魔を感じて安定化する能力、つまりこの自然界に存在するエネルギーを感じ、自由に操れる能力者が必要となる。
その能力者に出会えた霊魔は、冷蔵庫が無くとも氷を作れるし、ライターが無くとも火を熾せるのだ。

が問題もある。

人がその能力を使うときに、精神的身体的に充実していないと崩壊してしまい、そのエネルギーに飲み込まれてしまう。

そうなると、霊魔と同じような不安定な存在、しかも欲望に動かされる存在となる。
それを人の言葉で言えば、『亡霊』とか『亡者』だ。
そうなってしまった人たちがどれだけいることか。
零次朗の祖先たちは、その亡霊たちとも戦ってきたのだ。

おまえがこれからどういう生き方をしようとも、その『亡霊』たちとの争いは避けられないことを覚えておけ。》
< 19 / 57 >

この作品をシェア

pagetop