『霊魔伝』其の弐 火の章
「心が不安定だと、亡霊になってしまうと言うことか。」

《そうだ。心とは人として存在するためのエネルギーだ。その心のエネルギーが不安定だと言うことは、人としての存在そのものが不安定だと言うことになる。その心を鍛えることが、ここに来ている目的のひとつでもある。常に自分の存在を見失うな。》

「自分とは何なんだ。自分の存在をどう意識したらいいのだ。」

《零次朗よ、自分の存在を確認するには、どうすればよいと思うか。
自分一人では無理なのだ。自分を証明するのは他人なのだ。
それに気がつかなければならない。

霊魔が名前を欲しがっているのも、自分の存在を確定させたいのだ。
自分の存在を証明し確認してくれる人を作れ。
おまえを零次朗だと声に出して言ってくれる人を多く作れ。
それがおまえの存在を支えてくれる。
霊魔も人も同じなのだ。

さぁ、集中しろ。おまえの心に浮かぶ人は誰だ。》

零次朗はエントラの言うことに圧倒されながらも考えた。

「俺を証明してくれる人。俺を生んでくれた父さんや母さんたちのことを、俺は知らない。誰かいるのか。俺を零次朗だと言ってくれる人が・・・。」

ふっと、彩花の顔が浮かんできた。

彩花と最後に言葉を交わしたとき、彼女は泣いていた。

初めてだった。
彩花のあの悲しそうな顔は。

兄妹だと信じていたのに、突然赤の他人だと知らされたのだ。
もしかすると、もう会えないかも知れないという思いが、ひしひしと伝わってきたのだった。

《ほう、その娘がおまえの存在を支えてくれているのか。そうか、佐緒里が本当の霊魔使いに必要なものと言っていたのはこの事だったのか。》

「エントラよ。彩花が俺を支えてくれるのか。俺には彩花しか浮かばないんだ。」
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