この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
これは良くないと感じた俺は、仲裁に入ることにした。


「…おい。ヒゲ男」


俺は静かに立つ。


「あん?」


ヒゲ男はカウンター越しに俺を睨み付けてくる。


「とりあえず…落ち着け。お前その顔は怖すぎるぞ」


「は……?」


「お前、好きな女を本気でビビらせてどうすんだよ」


ヒゲ男は俺の言葉に、一瞬目を丸くさせた。


「あ……?」


ヒゲ男は美代と夏美を交互に見た。


青ざめる夏美と


その隣で美代もどうしたらいいか分からない顔をしている。


ヒゲ男はひとつ唾を飲むと、ばつが悪そうに頭をかいた。


「そ…うだな。美代ちゃん、ビックリさせてすまねぇ」


俺はそんなヒゲ男に歩み寄る。


「違うだろ」


今、俺は不思議とヒゲ男に対して嫌悪感を感じていなかった。


「ヒゲ男、お前自分でわかんねぇのか?」


それは、俺はいまコイツの本当の気持ちがわかったから。


俺の言葉に


ヒゲ男は眉間にシワを寄せて首を傾げた。


「お前が本当に好きなのは、美代じゃないだろ」


俺にはヒゲ男の心の声が聞こえた。


「夏美なんじゃないのか」





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