この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
砂浜に集まった誰もがヒゲ男の言葉に耳を傾ける。



「今さらだけど…お前がいなきゃ俺…なぁ?頼むから起きてくれよ…ッ」


絶望に押し潰されそうになりながらも


ヒゲ男は瞳を閉じた夏美に懇願するようにすがった。


「はぁ…なぁ?いい加減…いつもみたいに笑って、また俺を殴ってくれよ…ッ!」


ヒゲ男は夏美を抱き締める。



「なぁあぁぁ…夏美ぃ!!頼むから…ッ」


ヒゲ男の泣き声が砂浜に響いた。


「夏美ぃ…!!夏美ぃッ!!俺はお前が好きなんだぁぁ……!!」







































ザザ―――…ン


静かな波音にヒゲ男の声が消える。



嗚咽を漏らし震えるヒゲ男。


その背中はいつもよりずっと、小さく見えた。


そんなヒゲ男とあの日の自分が重なって見える。






あの、美代が死んだ日の――…






あの日を思い出し、俺の胸もまた締め付けられた。














夏美……





起きろよ……!











俺は血が滲むほど拳を強く握り締めた。











夏美………ッ!



頼むから



生きてくれ……ッ























―――ピクッ









その時―――…


夏美のぐったり垂れた指先が、小さく動いた。









そして


紫色の唇にスッと赤みがさしていく。

















「はぁ…うっさい……ばか……」



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