この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「私はここの現場責任者だが…君は本気で言ってるのかい?」


責任者は扇子で顔を仰ぎながら細い目で俺を見た。


「例えば、会話で魚に芸をさせることなんか出来ないだろう?」


「…………」


俺は生け簀の前まで行くと中の魚に話しかけた。


「おい。今から芸をひとつ頼みたいんだが…出来るか?」


虚ろな目をした魚たちは俺を見る。


『…芸?…交換条件ならいいよ』


「交換条件…?何が望みだ?」


俺の言葉に魚たちは顔を見合わせる。


『そうだな…海に…』


「海に?」


『海に帰りたい』


「……………」


俺は生け簀から元の場所へ戻った。


「芸は出来るらしい。だけど成功したら海に帰すことが条件だぞ。そっちはその条件のめるのか?」


俺の言葉に責任者は一瞬目を丸くしたあと、豪快に笑った。


「あっはっは、まぁ面白い展開だからね、このまま生放送を続けるか。もし本当に成功したら全部買いとって海に逃がしてやるよ」


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