この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
CMがあけ、再び大林リポーターがカメラに向かう。
「え~、視聴者の皆さま予想外の展開になりました」
大林リポーターはチラチラと責任者の顔色を伺いながら続ける。
「なんとですね…奇跡の青年は動物と会話が出来るらしく…今から生け簀の魚と会話をしてくれることになりました!」
TVから、スタジオのえ~?!という笑い声が聞こえる。
「生放送中にどこまでお伝え出来るか分かりませんが…今から一体何が起こるのでしょうか?」
そして、カメラが俺に向けられた。
「……………」
俺は生け簀のガラス越しに、静かに魚たちを見る。
魚たちも虚ろな目で俺を見ている。
正直、TVとかどうでもいいけど。
「海に帰る約束をしてもらえたぞ。あと少しで帰してやれるから」
俺の言葉に、虚ろな瞳の奥が少し動いた気がした。
俺はヒゲ男に大きめの桶を用意するように頼んだ。
そして桶の中に塩水をはり、生け簀の隣に並べた。