この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
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ユサ…ユサ…ユサ…
一定の心地よいリズムに、俺はぼんやり目を開けた。
『うッ……』
ゆらぐ意識の中でズキンと頭に痛みが走る。
『やっと目ぇさましたかニャ』
聞き覚えのある野太い声に意識が徐々にハッキリした。
俺は…まだ生きているらしい…
『お前……ボス…か?』
俺はいつの間にかゆっくりと歩くボスの背中に乗せられていた。
ぼんやりする視界の中で自分の手を見る。
そこには白い毛に覆われた肉きゅうがあった。
『俺…またうさぎに戻ったのか…』
『みたいだニャ。まぁ今は大人しく運ばれとけニャ』
ボスはゆっくりと歩きながら答える。
『ボス……なんでここに?』
俺はまだ気だるい体をボスの背中にクタッと預けたまま
顔だけで辺りを見渡した。
住宅街を歩いているようだが、辺りは薄暗くなっていた。
塀の上に覗く狭い空には薄く光る月が浮かぶ。