この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
『銀さんに、マサルがウサギに戻ってるから連れて来るように頼まれたニャ』


『え、銀が…?』


『そうだニャ』



ボスの話では


俺は住宅街の細路地の隅で衣服にまみれて倒れていたらしい。


そういやカラスに襲われた時にもこうやってボスに背負われたっけ…


『俺は…いつもボスに救われてるな』


俺は力なく笑った。


『ふ、銀さんの頼みは断れニャいからニャ…』


ボスは顔だけ振り返ると、にやりと歯を見せて笑った。












住宅街を抜け


繁みの草をかき分けてようやく緑地のボスの寝床につくと、銀が待っていた。


『銀…!!』


ボスはゆっくりと俺を草の上に下ろした。


『マサル氏…なかなか時間が取れなくてすまないっポよ。山吹が休暇を取って…代わりに僕が働いてるっポ』


うっすらと月明かりに照らされた銀は、確かに少し疲れた顔をしていた。


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