この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
白いアパートの前までつくと、俺は軽トラから降り部屋の鍵を回した。







美代、頼む…


頼むから帰っていてくれ…!





俺は祈るような気持ちで玄関を開けた。



しかし――…





ベランダから射し込んだ西日がまっすぐ廊下まで伸びて


部屋を静かにオレンジ色に染めていた。


静寂の中、伸びた西日はそのまま玄関の俺まで照らした。


「美代」


玄関に立ち尽くした俺は静かな部屋に向かって呼んでみた。


「美代…いないのか?」


そんなに大きな声じゃないのに


静かな部屋でやけに自分の声が目立つ気がした。


「…………」


無反応な部屋に別れを告げて


俺は玄関を閉めると表で待つ軽トラに向かった。


「……まだいなかったか?」


軽トラの窓越しにヒゲ男が身を乗り出してきた。


「あぁ…」


俺は沈んだ声で答えた。


「とりあえず…俺はこのあと、緑地内を探してみる」


あと、俺が知っている場所は緑地公園ぐらいだ。



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