先見の巫女
《雛菊》


…体が重たい…
指先から冷たくなっていくみたい…


畳みに膝を付き、光が失われた瞳を空へと向ける。
その空は分厚い雲に覆われていた。


「雛菊!!!」


部屋に朱雀が飛び込んできた。


「……朱雀……?」

「雛菊っ!!」


呼びかけてみれば必ず返ってくる…
あなたはいつも傍にいてくれた…


なのに…


あたしはあなたを傷付ける未来しか……


「…もう…嫌………」


もう嫌だ…
何も考えたくない…


誰かを傷付ける未来をあたし自身が作り上げてしまうのなら…


消えればいい…
黒闇龍の中に消えてしまえば…


『我を……望み受け入れよ……』


「…黒闇龍……」


あたしはあなたを…


「いけません!!雛菊っ!!」

「止めろ!!雛菊っ!!」


邪気がより一層深まり、雛菊に纏わり付く。


「…あなたを…望む…」


雛菊が全てを受け入れた瞬間ー…


『グオォォォォォ!!!』


黒闇龍の咆哮が響き渡る。





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