先見の巫女


「神子様が此処を離れれば、もはや二神の中立を図るのは難しくなります」


「分かってる…」


分かってはいる。
いずれ人と神は違えるだろう事は…


長年続いてきた人と神の共存は明日にも崩れてしまいそうなほど脆くなっている。


それは人が神に求めるだけ力を求め、それに頼りきり、人そのものが人としての良さを失ってしまったからだ。


人と神の間に生まれた私。その中立をしていた私もいずれ……


天へと上り、人としての生涯を捨てるのだろう。


妖は人の心の負の部分が生み出した闇…


このままいけば人も神も滅んでしまう。
神は人に信じられ存在する事が出来るのだから…


ここ最近で一体何神の神が消滅した事か。
人の負の感情から生まれた妖に襲われた者達は神に救いを求める。


そしてその救いがいつまでも訪れないとしたら…?


「人は神を信じなくなり、絶望を生み、また妖が生まれる。
これは悪循環だわ」


羽優の言葉に、神官は罰が悪そうに顔を逸らした。


人は神や神子を神殿に閉じ込めた。
その恩恵がずっと人に注がれるように…







< 166 / 216 >

この作品をシェア

pagetop