先見の巫女


そして悲劇は起こった。


黒闇龍の力は深い憎悪に飲み込まれ私達にも太刀打ち出来るようなものではなくなっていた。


「…翠……ごめんね…」


ここまで翠を連れてきた事を深く後悔する。
翠の朱雀の力も、私の浄化の力も役にはたたなかった。


「我が元へ来い!!!羽優!!!
我はお前が欲しい…
お前を依りましとすれば
もっと大きな力が手に入るのだ!!!さぁ!!!」


すでに正気を失った黒闇龍に羽優は胸を痛めた。
そして決意と決断をする。


「翡翠龍…お願い…」

「…羽優…
我はお前に幸せになって欲しい…
考え直せ……」


それでも羽優は首を横に振る。
もう決めた事だから…


「駄目です…行っては…」

翠は傷付いた体に鞭を打ち、必死に立ち上がろうとするが力が入らない。


「…わかってたの…
こうなる事も、こうしなければいけない事も…」


羽優は手を合わせ瞳を閉じた。
酷く悲しい…
こんなにも胸が痛いなんて…


「…時を越え来たれ
東を守りし四神、
青龍の御霊…翡翠龍よ…」

翡翠の光が羽優を包み込む。


「羽優!!自分を犠牲にしないで下さい!!他に方法が!!」

「迷っている時間はそれだけ多くの死者を出すわ。
遠の昔から覚悟は出来ていた筈なのに……」


羽優には心残りがあった。それは…


「あなたと離れなければならない事が酷く悲しい…」

出来る事なら…
共に生きたかった……


でも…そのあなたを守れるなら私は…


「我を依りましとし降臨せよ!!」


命を賭けても構わない!!!



「羽優ーーーーっ!!!!!」


翠の声と同時に翡翠の光は弾け、翡翠龍と黒闇龍は攻めぎ合う。


そして翡翠龍によって黒闇龍は京の大地の奥深くに封印された。


そこで記憶の映像は
パチンッと消えた。








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