BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~
 「泣くな……泣くなよ…マリン……」

そう笑うと、彼女の頬に手を添え、親指で涙を拭う…

頬に当てられたその大きな掌は冷たくて…

氷のようで…
涙が再び流れだす…


そして…


ディックはマリンへと顔を近づけ…

ゆっくりと、キスをした…


最初で、最後のキス…

想い合った…
2人の…

永遠の…
消える事のない、キス…



このまま…
ずっと…
ずっと、ずっと続くと思ってた…

幸せな時が…


だが…
そうも上手く事は進まない…

運命は、残酷な物だ…

時として、試練を与える…


その試練を、彼女に、マリンに、神は与えた…



 「…ありがと……マリン……ありがと……」

彼は、涙の滲むその瞳で彼女の瞳を見つめると、フッと力が抜けたように、上体が倒れ…

頬に添えられていた、冷たい掌も、ゆっくりと離れていった…


 「……ディック……?」

マリンは、眠るように目を瞑る彼の名を呼ぶ…

何度も何度も…
彼の返事が返ってくるまで…
何度も…
何度も…


しかし、いくら待っても返事はない…

 「ディック……?」

 「…」

 「……ディ…ック……」

何度揺すっても、何度彼の名を呼ぼうと、閉じられた瞳は、開く事はない…


瞳に溜まった涙は、耐えきれず、溢れ出す…


 「ディック…!ディック!!」

ギュッと彼を抱き、何度も彼の名を呼ぶ…

彼を、眠りの中から連れ戻すかのように…


だが、彼は戻って来ない…

もう、彼はこの世にはいない…



トクトクッ…と言う心臓の音が聞こえない…

冷たくなった彼の体…

人としての暖かさを感じない…



わかっている…

わかっている…

でも、信じたくない…

信じたくない…



彼がいない現実なんて…

信じたくない…


もう、嫌だ…

嫌だ…


これは夢だ…

夢なんだ…


覚めなくちゃ…

夢から抜け出さなくちゃ…



グッと目を瞑り、彼を抱き締める力も強める…


灰色の空からは、ポツリポツリと雫が落ちていた…

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