BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~

スタスタと何のお構いもなしに歩を進めている男性。

彼は、シュウ達が後ろからついてきているだろうと思っていた。

が、なぜか足音がしない事に気づき、足を止めると、後ろを振り返る。



 「……何やってんだ……彼奴等……」

振り返るなり、彼はそう言うと、腕を組み、少し首を傾げた。


何故そんな事を言ったのかというと…


彼の瞳には、遠くで立ち尽くし、ポカンと口を開け、彼の斜め後ろ辺りに目をやる、シュウ達4人の姿が映っていたからだ。







穏やかな風が、涼やかな空気を運んでくる…

その風が彼ら4人の髪や服を揺らしても、身動き1つとらなかった。

ただただどこかを見つめ、驚いた表情を顔に浮かべるだけ。



 「…景色が………変わった……」

ボソッと言葉を漏らすシュウは、枯れていた地面、自ら傷を負った傷口、そして不思議な岩へと目をやった。



景色が変わった…

それがどういう意味を表しているのか…

それは、シュウの見つめる先を追えばわかる。



緑のない枯れた地には、生き返ったかのように潤いが戻り、背の低い草花が元気に咲いている…


先程の戦いで追った傷は消え、血の跡も、傷跡さえも残っていない…


少年が座っていた巨大な岩、それは弧を描いて流れる、綺麗な噴水へと変わり、陽の光を受けて、キラキラと輝いていた。



その噴水の後ろには、石でできたような、真っ白な家の建ち並ぶ、水の都と呼ばれる町が広がっていて…



何が何だかわからないと言った様子の4人。

変わった景色をキョロキョロと見回していると…


 「おーーい!!」

 「「?」」

遠くで何かを叫ぶような声が。

そちらへと目を向けると…


噴水の近くで、こちらに大きく手を振る男性の姿が…


4人は、一度後ろへ振り向くが…

そこに誰かがいる訳でもなく…


 「ハァ…」

聞き取れない程小さく溜息を漏らすと、その男性の元へと向かって行くのだった。




4人の姿が消えた地では、草花が踊るかの如く、風に身を揺らしていた…


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