BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~

窓辺に訪れた一羽の雀。
チュンチュンと軽快なリズムを奏でる。

可愛らしいその姿を踊らせ、部屋の中へと飛び立とうとする

が、部屋の異様な雰囲気に圧倒され、すぐさまその姿を消したのだった…



シュウは、残酷な真実を聞き、揺れる紺色の瞳で、どこかを見つめていた…




そんな彼を気にする事なく、ラルフはシュウを鋭い瞳で見据える。


 「彼奴を連れて行くのは止めておけ。」


突然発せられたその言葉…
傷ついた彼の心を更に深く傷つけ、どん底に突き落とす…

暗い、闇の奥深くへと…


 「彼奴は、お前達の力にはなれない。確かに、魔法使いとしての才能はある。それも、トップに値する程の…
漆黒のDRAGON、シュウ、お前の力にはなるだろうが…
彼奴は、『死』を恐れている。」


 「!…」


『死』を恐れている…
漆黒のDRAGONの為に生きる事を拒んでいる…
シュウと共に、仲間でいる事を拒否している…


今のシュウには、全てがマイナスに聞こえ、悪い方へ、悪い方へと考えてしまっていた…




 「ライナスは、ただ単に『死』を恐れている訳じゃないある!それには理由が…!」

ラルフの隣にいたマリンが、伏せていた顔を上げ、そう叫ぶが…



 「理由は何にせよ、彼奴を連れ戻す事は、諦めるんだ。」

マリンの言葉は途中で遮られ、鋭い瞳をマリンに向けた。

睨まれたマリンは、言葉を失い、再び目を伏せる…



地を照らす太陽が、怪しげな雲に隠れ、その陽を遮った。

この部屋に入ってきていた光も消え、何者かの心の内を表すかのように闇が満ちた…



そんな闇の中、一つの声が響いた。


 「確かに、ライナスは『死』を恐れてる。でも、『生死』を恐れるのは、誰しも同じ事だと思う…私だって、『死』は、もう……」


目を伏せたまま言うルリの茶色の瞳には、何か辛さを表すように、曇っていたのは、気のせいだろうか…?


 「そうあるよ……生きている者は、いつかは、『死』を迎えるある…それを恐れないなんて、無理あるよ…」


ルリの言葉に納得し、マリンも続けるが、この闇は一向に晴れる様子はない…

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