BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~

身を起こしたレナの側に腰を下ろすライナス。




 「…怪我は……?」


遠慮がちに訊くと、レナは横に首を振る。

そして口を開くが、何も言わずに閉じてしまった。


どうしたのだろうと首を傾げるが、彼は無理に問いただそうとはせず、ただ側にいるだけだった。




互いに口を開く事なく、静かに時が流れゆく。


その2人の様子は、若いカップルの初めてのデートのような雰囲気である。




どちらも口を開く事はなかったが、突然レナは顔を伏せぼそりと呟く。




 「ライナス……お願いがあるの………」


 「頼み?」


遠慮がちに言う彼女に聞き返すと、彼女は伏せていた顔を上げライナスを見つめる。



そして…



 「私の目を、潰して……」


今にも涙が流れそうな瞳をして言うレナ…


その彼女の言葉が、ライナスの思考を止め、動かなくする…




 「…もう、何も見たくないの……傷つく皆の姿も……悲しむ姿も……何も………」


力強く布団を抱き締め、流れそうになる涙を耐える…


だが彼女声は、ライナスには届いていなかった…




どこか一点を見つめ、悔しそうな顔をするライナス…






目が見えなくて、この世の全てを見てみたいと願う奴がいて…

何も見たくないと、目が見えなければいいのに言う奴がいる…




永遠に続く青空を見せてやると約束しておいて、何も見たくないと言う彼女の目を潰せと言うのか…




そんなの、できない…






拳を握ると、今にも泣き出しそうな彼女をしっかりと見つめた。




 「…ごめん…それだけは、できねぇ……」



潤んだ瞳を見つめそう言うと、彼は彼女の額にそっと触れる。


すると彼女の体からは力が抜け、彼の身へと寄りかかった。




目を瞑る彼女の瞳からは、一粒の雫が流れ、綺麗に頬を流れてゆく…


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