BLACKNESS DRAGON
~希望という名の光~
涙を流すレナを微かな魔力で寝かせ、優しく頭を撫でたライナスの姿は、部屋の外にあった。
扉に背を付け顔を伏せる彼の瞳は、悲しい色をしている…
怪我を負った奴は沢山いるし…
外傷はないのに心に傷を負った奴もいる…
姉貴はいつ倒れてもおかしくない程疲れてるし…
頑張ったつもりだったけど、誰も救えちゃいなかったんだな…
悔しそうに瞳を瞑ると、彼は何かを決意したように目を開き大きく息を吸う。
そして親指を噛むと、その傷から流れた血で床に何かを描き始めた…
「『血に染まる地に現る暖かき光……
優しく微笑み命を救い……
涙を流し傷を癒す……
綺麗な歌声で幸せを運び……
力強く抱き締め希望を与える……』」
呪文を唱えながら床に複雑な魔法陣を描き出す。
それが完成すると、両手を魔法陣の中心にかざした。
「『治癒の力を持つ天使よ、我らに救いの手を!』」
最後にそう言い放つと、魔法陣がオレンジ色に輝き始め、眩い光を放ち出す。
目を開けていられない程に光が辺りに満ち溢れる…
その光は暖かく、どこか心が癒される…
光が収まった頃、ライナスはゆっくりと目を開け、少し上を見上げた。
そこには、ふわっとした栗色の長い髪に、水色の瞳。
胸元にリボンのついた黒い服を着、レースをあしらった黒いスカートを履いた綺麗な女性の姿があった。
スカートから伸びる細く白い足は裸足で、宙に浮いている。
《お久しぶりです、我が主。》
宙に浮いている為、ライナスを見下ろす状態になっている彼女は、礼儀正しく頭を下げた。
《今宵はどんな要件で?》
「助けてもらいたいんだ。傷ついた仲間達を……」
優しく響く声に、ライナスは悲しそうな顔をして答える。
「キュア、お前ならどんな傷も治せるだろ?酷い傷も……心の傷も………」
《はい、トップの階級に属しますので。禁忌とはいきませんが。》
女性を見上げ問う彼に、彼女は柔らかく微笑みながら丁寧に答えた。