BLACKNESS DRAGON
~希望という名の光~
「…どこあるか……ここは………?」
緑豊かな町の中、静かな道に1人の少女が走ってやって来た。
荒い息を吐きながら、疲れたように前かがみになりながら両手を膝に置く。
彼女の名はマリン。
ストレートの黒髪を三つ編みにした、細身の少女。
拳は怪我をしているのか真っ赤に染まっている。
息を整えると、彼女は誰かいないかと町の中を歩き出す。
昼間だというのに、人影1つない…
何かあったのだろうかと、無意識に空を見上げた。
「…灰色の、雲……?」
見上げた空は厚い雲に覆われ光がなく、何か嫌な予感がした…
赤みがかった髪の少年の姿が脳裏に浮かび、彼女は眉を潜めながら足を速める…
辺りを見回し小走りで進んでいると、突然大勢の人々がこちらに向かって走ってきた…
子供達の手を握り、抱きかかえ、何かから逃げるように走っている…
「ど、どうしたあるか……?」
物凄い勢いでやって来る人々の群に驚きながらも訊いてみるが、人々は逃げるのに必死なようで応えてはくれない…
人の波に流されながらも、彼女は人々の進行方向とは逆に歩いて行った…
何度もぶつかりその度謝り、それを繰り返していると、近くで爆発音のような轟音が響いた…
その音が聞こえた瞬間、人々は悲鳴をあげ我先にと逃げ惑う…
人々に押され後ろに下がりながらも何とか前へと進み、やっとその波から出る事ができた…
ホッと胸をなで下ろし一息ついていると、再びあの爆発音が…
辺りを見回すと、近くで煙が上がっているのが目に入る…
何度も鳴り響く爆発音とモクモクと立ち上る煙を目印に急いで現場を目指す…
近道はないかと左右を見渡しながら全力疾走…
家々の隙間をすり抜け、木の幹にぶつかりそうになりながらも彼女は煙の上がる場へと辿り着いた…
微かに煙を上げ焦げつく匂いに顔を歪めながら、粉々になったブランコの残骸を見下ろすと、近くで何者かが叫ぶ声が…
その声の方へと振り返ると、霧のように煙が漂う中、1人の男性が女に殴りかかっている所だった…