BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~

 「ああぁぁぁーー!」


声をあげながら直立不動の女に殴りかかる茶髪の男性ダイ。


彼は抑えきれなくなった怒りを女にぶつける為、握った拳を力の限り振るった…


風を切ったその拳は、身動き1つ見せない女、サラにあたるはず…


なのにその拳は、ゆっくりと挙げた左手によって軽々と止められた…




 「なっ……」


止められるとは思っておらず、驚き目を見開くと、サラは無表情のまま掌に納めた拳を握り彼の腕を引く…


急に腕を引かれバランスを崩した彼を簡単に地にねじ伏せた…




 「貴方達に手を出すつもりはないと言ったはずです。なのに、言う事を聞かない貴方が悪いんですよ?」


呆れたように溜め息を吐きながら、サラは地に伏せたダイを見下ろして言う。


彼の背を踏みつけ掴んでいた拳を捻る…


痛みと悔しさの入り混じった表情を見せたダイは、サラを憎しみの瞳で睨みつけていた…




そんな時…




 「やぁぁぁあぁぁーー!」


どこからか聞こえた少女の声…


その声はこちらに向かってやってくる…



身動きのとれないダイはなんとか顔を上げ、彼を見下ろすサラは腕を掴んだまま声の主へと目を向けた…



声をあげながら走ってくる少女…


木の棒を両手で握り、斜め下に構え黒髪を揺らしながら向かってくる…



少女、マリンはサラに近づくと、スピードを落とす事なく握った木の棒を高々と持ち上げ振り下ろす…


ブンッと風を切る音と共に地が揺れ泥が舞う…



握っていた木は根元から折れ、叩きつけた地は凹みひびか入る…




その窪みの中に敵が居ない事がわかると、マリンは地に伏せるダイへと目を向けた。




 「大丈夫あるか?」


 「…お、おぉ………」


彼女の力強さに圧倒させられていたダイは、差し伸べられた手にハッとして我に返ると、彼女の手を借りる事なく立ち上がる…


横に並んだ2人は、遠くの家の屋根に身軽に着地したサラを睨んだ…


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