BLACKNESS DRAGON
~希望という名の光~
数秒考えると、彼女は何かを思いついたように顔を上げ、マリンをチラリと盗み見しながら呟く…
「……ある事はある………否、これがこの力に対しての最善の解決策なのかもしれない………」
途絶える事のない突風を受け、耐えるように力強く地に足をつけるハルクとダイを見遣り言うと、期待のこもったマリンの瞳をしっかりと見つめ言葉を続ける…
「操られる人物を殺す。それがこの能力を止める唯一の方法。」
そう言い切る彼女を疑いの眼差しで見つめるが、彼女の慎重そうなその声は嘘なんかではないと言っていた…
信じられないと目を見開き、マリンの瞳は混乱するかのように右往左往…
「……殺…す………そ、そんな事、できないある…………体は操られていようと、彼らには意志が…………」
「ごたごた言ってる場合じゃない!こっちには時間がないんだ!」
「っ…」
彼女の怒鳴り声にビクッと身を震わせながら苦い顔をし顔をそらす…
どうしたらいいのか分からず迷う心は揺れ、ハルクとダイを想う気持ちは乱れる…
この場から逃げてしまいたい…
現実逃避して、もうこの現実を忘れてしまいたい…
そう思いながら無意識に目を瞑る…
すると…
「彼らが悪に染まる前に救ってやるのが、あたし達のできる事なんじゃないのかい?」
近くで聞こえたその声に、マリンは瞼を押し上げ声の主を見上げた…
自分を見下ろす女の隠れた瞳は優しい色をしているように思える…
「悪に染まる前に、救う………」
前方で苦しんでいるハルクへと目を向け呟くと、再び女を見上げゆっくりと無言で頷く…
女は頷いたマリンの頭を乱暴に撫で、後方の人物へと顔を向けた。
「茶髪の男を頼む。あいつは接近戦には弱いはず。」
最後まで言い終わる前に地を蹴ると、女は風に乗って物凄いスピードでハルクとの距離を縮めて行った。