ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「流石はエド、改めて君の演奏は素晴らしいと思うぞ!
心が洗われるようだ。俺はいつも根性で逆境を潜り抜けてきたが、やはり仲間の助けを借りるというのも良いものだな。
お陰で身も心も軽くなったような気がするぞ!」
何故か涙を流しながら、アレックスはエドの演奏に聴き入っていた。
―――いつもの光景である。
(毎回毎回流して……飽きないのかしら)
私は呆れつつも、爽やかな表情で二人を見守っているディーンに訊いてみた。
「さっきの話だけど、アレックスが『疲れる』という感覚が分からないなんて本当なの?
いくらなんでもそういうのって、自然に分かってくるものなんじゃないの?」
「まあ、普通ならそういった感覚は意識せずとも覚れるものなんだが……何故かアイツはそれを装備のせいだと思い込んでいてね。
だから自身で気付かない限りは、納得できないと思うんだよ。
特にアイツの場合は他人がいくら口で言っても、聞く耳を持たないだろうしね」
「あーそれは言えるわね」
彼はかなり思い込みが激しい、ということはこの数日間で分かったことである。
更に自分の信念を曲げない一面もあった。