ゼロクエスト ~第2部 異なる者
私はディーンの話に目を丸くしていた。

果たして本当にそういうことがあるのだろうか。自分の疲れている状態が分からないだなんて。

「なあアレックス。もしかして全身が怠(だる)かったりするんじゃないのか?」

「む?」

ディーンの声で、彼は初めて私たちのほうへ首を巡らせた。

その表情から察するに、近くで会話していた私たちの声が聞こえていないようだ。

彼は先程から苦しそうな表情で顔を赤くしながら、何度も起き上がろうと試みていたのである。その額には脂汗まで浮かんでいた。

「確かにいつもより妙に重い感覚はするが……心配はいらぬ。先の戦闘の影響によるものだろうからな。
恐らくこれは、装備の調整が必要だという前触れなのかもしれん。
が、しかし!
これしきのこと、俺の根性を持ってすれば、負けることがないっ!!」

気合いを入れるかのように意味不明なことを熱く叫びながら、アレックスは再び上体反らしに挑戦しようとした。しかしディーンが肩に手を掛けて静かにそれを制した。

「だがアレックス、お前は一人じゃない。俺たちは今パーティを組んでいるんだぞ。こういう時にこそ、エドの能力が必要なんじゃないのか?」

「え〜? 僕ですかぁ〜?」

早々と一人で寝袋の準備をしていたエドは突然話を振られ、きょとんとした顔をしている。

「エド、アレックスのためにいつものアレ、かけてやってくれ」

「了解です〜」

『いつものアレ』というのは、エドが唯一使える体力回復術「アブソープライフ」のことである。

但しこの術は『術が効きやすい』体質のアレックスにしか効果がなく、普通の私たちにはエドの使う技は弱すぎて、あまり効力が感じられないのだ。
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