ゼロクエスト ~第2部 異なる者

第7節 刻印(マーキング)




これからルティナと話すことは、ゼリューや『瘴霊の種』についてだ。

瘴気に侵されていた二人はゼリューと面識がないだろうし、『瘴霊の種』についても憶えていないはずである。

だからそれらに関しては、特に説明する必要がないだろうと判断した。

そのため、彼らが同席していると例によってややこしいことになりそうな気がしたので、先に席を外してもらったのだ。



「それであの男が消えたのは、間違いではないんだな」



再度問い掛けられたその言葉で、私は頷いた。

ルティナには事前にゼリューのことなどを、簡単に話しておいた。

彼女が昨日廊下で私の顔を見た途端、そのことについて訊ねてきたのだ。

同様にゼリューを追っていた彼女の目的も、簡単に話してくれた。

「消えたのは確かだけど……でももしかしたら私の目をあざむくため、透過術のようなものを使っただけかもしれないわよ」

「それは可能性として低いだろうな。
あの術は狭い空間でなければ成功しない。
それにあの結界はヤツの空間だ。
わざわざ透過術を使ってまで隠れる理由がない」

「なら新たに結界を作って、その中に隠れたという可能性は?」

「恐らくそれも低い。何故なら、あの男の近くにはあたしも居たのだろう?
結界は術士を中心とした一定空間を、外部から遮断する術だ。
周囲を巻き込まず、術士本人だけがその中に入り込むことは有り得ない」

「だとすれば、他に考えられることといったら」

「瞬間移動術だ」

ルティナは自信たっぷりな態度で、即座に答えた。
< 256 / 298 >

この作品をシェア

pagetop