ゼロクエスト ~第2部 異なる者
いや、よく見ればそれは影ではない。

人間の男だった。

全身黒いマントのようなものを羽織っている。頭は黒い短髪が覗いていたが、口元は隠すように黒い布で覆われていた。

全身が黒ずくめで、見るからに怪しい格好だ。

しかも今物凄く、的外れな独り言をぬかしたような気もするが、それに対して突っ込んで良い空気ではない。

「あんた一体、何者なのよ。何でいきなり攻撃してくるわけ?」

私は何処にでもいる一般的な、ただの巡礼者だ。誰かに恨まれる理由など当然ない。

だとすれば、狙いは一緒にいたアレックスなのか。それとも人違いで攻撃されただけか。

「答える義務はない」

「もしかして人違いじゃないかしら。私、あなたのことなんか知らないんだけど」

「貴様は知らなくとも、俺は貴様らを殺すのが仕事。これ以上の会話は、愚問愚答というものだ」

男はくぐもった声でそう告げると両手に3本、計6本の短剣を持ち身構えた。

こちらを睨め付ける双眸には、鋭い眼光が宿っている。

「これ以上の会話は無意味」と、その態度が示していた。
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