ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「魔物……」

小さな呟き声が聞こえたあたしは、彼女の顔を肩越しから覗き見る。

すると、先程よりは幾らか顔色が良くなっているような気がした。頬には赤みが戻り、強張っていた表情も徐々に緩みつつあるようだ。

あたしはここで嘗て、一緒に仕事をしたことのあるハンター仲間のことを、ふと思い出していた。

他の職種でも同じだとは思うが、あたしたち魔物ハンターも目標が強敵の場合には即席でパーティを組み、同業者と協力して首を取りに行くことがある。

過去何度か一緒に仕事をしたことがあり、精霊術士だったが、あたしから見てもかなり腕の立つ男だった。


―――――ある欠点を除いては。


何故そんな彼の顔をここで思い出したのかといえば、似ていたからだ。

遺体を見詰めた時の瞳。表情。

後からその事実を知った時の、憑き物でも落ちたような様子。

巡礼者とはいえ、彼女も精霊術士だ。少なくとも戦闘経験があり、死体にも見慣れているはず。

遺体を前にしたからといって、動揺するはずがない。現に今朝は普通に戦っていた。

なのに先程のあの様子。

もしかしたら……という思いが胸を過ぎっていたが、しかし通りすがりであるあたしには関係のないことだ。

寧ろ今は、最優先でやるべきことがある。

恐らくこの騒ぎを聞き付けた騎士たちが、直ぐにでも駆け付けて来るだろう。

あたしは残った胴体を急いで担ぐと、自然と出来た道を通り、彼らが到着する前にこの場を立ち去ることに成功したのだ。
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