ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「だったってことは、今は違うってこと?」


茜の声が震えていた。


怜央の顔を食い入るように見つめる。


でも怜央は、川の流れを見たまま、茜の顔を見ようとはしない。


「今も、好きだ。

でも俺、もう茜の側にはいられないから。他の奴に茜を取られるなんて考えるだけで嫌だったけど、あいつなら、許してやってもいいかな。日向なら……」


「やめてよっ!

冗談でもそんなこと言わないで!」


「……冗談なんかじゃない」


怜央は初めて、茜の顔を真正面から見た。


あまりに真剣な表情だったので、茜は言葉に詰まった。


「どうして? どうしてもう側にいられないの? いつも一緒にいてくれたじゃない」


「俺、もうすぐ死ぬから」


サラリと言った言葉に、茜は絶句した。


全ての景色から色が失ったように、ぐらぐらと歪む。
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