ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
胸がちぎれてしまいそうだった。


大好きな人に『好きだ』って言ってもらえたのに、全然嬉しくなかった。


毎夜、夢見てきたことだったのに。


橙色に輝く太陽が沈む川辺で、愛の告白をされる。


それは最高のシチュエーションのはずだった。


なのに、どうしてこんなことになるのだろう。


「待てって!走るなって、その足で!」


怜央の制止を振り破って、茜はじんじんと痛む足を引きずって走った。


「来ないでよ! もうあたしを守れないなら、優しくしないで!」


この言葉に、怜央は固まった。


茜は怒りに任せて口走ってしまっただけなので、怜央が固まっていることに気付かずに走っていってしまった。

怜央はショックで動くことができなかった。


自分で言ったことなのに。


自分の言葉に首を絞められていた。

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