ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
でも、もう二度と会えないような予感がして、呪縛を解くように身体を動かした。


足を引きながら走る茜の後ろ姿を見ながら、急いで追いかける。


「茜……っ!」


怜央が呼びかけたその時だった。


突然強風が吹き、怜央と茜の間を引き裂く。


細かい砂埃が風に舞い上がり飛んできたので、怜央は顔を腕で隠すようにして目を瞑った。


「キャッ!」


茜の短い悲鳴が聞こえて、薄目を開けた。


目を瞑っている時間は一瞬だったはずなのに、さっきまでそこにいたはずの茜の姿が消えていた。


「茜!?」


怜央は慌てて駈け寄り、周りを見渡した。


死角となる物は何もなかった。


人が隠れるような場所も。


見晴らしのいい川辺だったので、見失うということはあり得なかった。


ましてや、茜は足に怪我をしていて、早く走れない。

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