ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
再びあの匂いを嗅いでしまったら、もう元には戻れないだろう。


何が起こるか分からない。


何が起こっても、外れかかった鎖は簡単に外れ、自分は人間ではいられなくなる。


赤銀は逃げ道さえも塞いでしまった。


もう少し、時間があると思っていた。


怜央は飲みこまれそうなほど、深い闇色に染まった川を見つめ、そしてゆっくりと瞳を閉じた。


川の流れが蛇のようにうねっているようだった。


まるで自分の心の動きのよう。


その映像を心にしっかりと仕舞って、怜央は目を開けた。


そして空を見上げ、闇を睨みつける。


その瞳には、もはや迷いはなかった。
< 114 / 370 >

この作品をシェア

pagetop