ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「ヴァンパイアはいないようだな」


「そんなことないで。ほらあそこに」


日向は長い鼻先でくいと指し示した。


その先には黒いマントの下に夜会服を身に纏う男と、真紅のイヴニングドレスに黒いコートを羽織った女が寄り添い合うようにして歩いていた。


しかし顔にはベネチアンマスクを付け目元を隠している。


「なんで仮面をつけているんだ?」


「嫌味な奴らや。
昔コクーンがヴァンパイアを襲う事件が多発して、それからコクーンの前では仮面を付けることが慣例となったらしい。
ヴァンパイアはコクーン達がヴァンパイアを襲うのは、美しい顔に嫉妬しているんだろうと思ったらしいで。
高慢な奴らやで、ほんま。

でもラシードが王になって差別を徹底的に排除してからは仮面をつけることもなくなったらしいやけどなぁ。
あれはコクーンに配慮しているように見せかけてバカにしとるんや。
コクーンは醜いから自分たちの美しい顔を見せたら失礼だってな」


「よく知ってるな」


「レオが眠ってる間にちょくちょくバドに連れてきてもらって魔界のことも色々聞いてん」


日向は得意気に言った。
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